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おもな登場人物の紹介
(イメージ)
〖メインキャスト〗
ラリー・ハルソン
テラ共和連邦空挺部隊の隊長。
高速宇宙艇の修理に立ち寄ったザドヴィルで
死者に襲われ、部下の大半を失う。
ジル・ハルソン
テラ共和連邦空挺部隊の航海士。
仲間を次々正体不明の何かに襲われ、精神が崩壊
してしまう。
バビルス
テラ共和連邦空挺部隊の通信士。
機械全般について秀でているが、戦闘には対しては
戦力外。小太りの体型が災いを呼ぶこともある。
謎の女
この物語の主人公。
ラリーたちが手を焼く、化け物は一撃で倒す
高度な戦闘力を誇る。
『プロローグ』の章解
〝地獄の巣穴が開きとき、シシャが血肉を求めて地上を闊歩する〟
これは死霊創世記の死者復活論の中の一節である。
〖第一幕〗
近未来の地球、新天地を銀河系全域に広げ、植民惑星を開拓しつつあった。そのひとつ、ザドヴィルに降り立ったラリー・ハルソン率いるテラ共和国連邦の空挺部隊。彼らがみたのは荒廃した世界だった。
ラリー隊は、生存者を求めて街の中心街に位置するモールに向かう。
〖序 章〗
東の空に光り輝く物体が浮遊する。
そう問われれば大部分の者が『太陽』と答えるだろう。
だがこの光り輝く物体は東の空に浮かんだまま動かない。
ラクビーボールを横にしたような楕円形で、大きさはなんと直径十キロに及ぶ巨大な物体だ。
天空に突如として現れたこの物体のことを人々は『デッドフォール』と呼ぶ。
太陽光の影響を受けて、日中は宝石をちりばめたように光り輝いているが、夜になるとそれはまるで巨大なブラックホールを彷彿させる。
このデッドフォールの出現がすべての元凶であった。
出現ととともに、地上に存在する街のすべてがそこから伸びる蜘蛛の巣のようなもので宙空にからめとられてしまった。
異常現象はそれにとどまらない。
一部の人間が突如として暴徒化し、狂い始めたように人々を襲い始めた。
暴動は街から街へと波及し、都市は壊滅状態。政府も軍を派兵するも鎮圧することはできなかった。
この暴動によって多くの民間人が死亡した。
だが恐ろしいのはこの後だ。
死んだ者がよみがえり、人間の血を求めて、肉をむさぼり喰らいはじめたのだ。
〖荒れ果てた都市〗
どこからとなく、鼻を突く不快臭が漂ってくる。
有機物が焼け焦げたにおい。生もの腐りかけたにおい。どろくさいにおい。汚物のにおい。
入り混じったこれらの臭いを数分間嗅いでいると、嗅覚は麻痺していき、ほかの感覚器官も徐々に犯されていく。
そしてこれらの不快臭のなかに、なにやら血なまぐさい臭いも一緒に混じっている。
ここはれっきとした文明都市の中心街である。とはいっても、それは以前の姿で今やこの場所は廃墟に等しい。
こうなってから時間が随分と経過しているようだが、それほど大昔の話ではない。
建造物の荒廃度係数から試算して、およそ八か月から一年くらいであろう。
街の名は『ザドヴィル』という。
その荒廃しきった街に、迷彩柄の服に身を包んだ一団が姿を現した。
軍服の右胸に白い鷹の紋章が刻み込まれている。
これはテラ共和連邦軍の空挺部隊をさす。
リーダーは長身の黒人で、名をラリー・ハルソンという。
彼は、テラ共和連邦(二十一世紀末、地球球連邦崩壊後に新たに樹立された世界共同体)軍空挺部隊所属の特務隊のメンバーである。
隊員は彼のほかに妹のジルを含めて8名おり、宇宙艦の損傷修理のためこのパルマ(植民惑星HIV二六)に訪れていた。
だが目の前の状況は彼らの想像を絶するほど、凄惨なものだった。
地球人類がこの惑星に根を降ろし、すでに150年以上経過した。
人口は八億五千万人、惑星の五分の二が都市化された。
ところがどうだ。ラリーたちの眼前に広がる光景は、文明は崩壊し、人々はすべて死に絶えているかのようであった。
〖青い光点の怪〗
「おい、バビルス。生体感知弾を打ち上げろ」
ラリーが何やら黒い重そうなバックパックを背負った小太りの白人隊員に指示をだす。
彼は瓦礫とコンクリート片で覆われた荒地におもむろにバックパックを下ろすと、中から機材やモニター画面、それと全長およそ三十センチのミサイルの形状をした打ち上げ装置を取り出した。
バビルスがモニターのキーをポンと叩くと、発射台装置から生体感知弾が勢いよく宙へと飛び上がっていく。
そして数分後、情報が地上のモニターへと送られてきた。
「どうだ。住民たちは?」
ラリーがモニター画面を食い入るように覗き込む。
そこにはザドヴィルの街の見取り図が映し出されていた。
「ええ、それがちょっとおかしいんです」
バビルスがありえない状態に首を傾げた。
「なにが、どうおかしいんだい」
ジルもラリーと一緒にモニター画面を覗き込む。
「この先の十字路の右側にあるショッピングモールに相当数の生体反応が感じられるのですが、反応が二種類あるんです」
「二種類?それはどういうことだ」
ラリーが先を促す。
「ええ。少数の赤光点以外に、かなりの数で青光点が見られるんです」
「青光点だって!」
彼の言葉に隊員たちが一様に顔をしかめる。
赤光点は、おもに三十五度から三十七度の熱源をさす。これは人間の体温に相当する温度だ。
橙光点は四十度以上、青光点は三十四度以下で示す。まれに感染症等に罹患している者や負傷等で高熱を発症した場合など、橙光点がつくことがある。
モニター画面をみたジルが思わず声を上げた。
「おい、どういうこと? 青光点が勝手に動き回っていやがる」
本来低体温症で青光点がつくことがあるが、その場合身体の自由は著しく制限される。そのため、青光点が決まって同じ位置での点滅となるのが通常だ。
「状況は未確認だが、とにかく生存者の安否が優先だ。まずはそのモールへと行ってみることにしよう」
ラリーたちは一抹の不安を覚えながらも、生存者が待つというモールへと急行する。
〖第二幕〗
モールにたどり着いたラリーらは、生存者がいる地下駐車場を急行する。ところが、そこにいたのは未知の生物でラリー隊に一斉に襲いかかってきた。
〖生存者を捜しに〗
目指すモールはザドヴィルの東地区の外れにある振興住宅街の近くにあった。
その規模は野球場一面分の広さがあり、それが三層構造になっている。
一階が飲食料品と生活必需品、二階が医薬品、資材関連商品、三階はレストラン、ゲームセンター、映画館といった娯楽施設が並び、そして最下層が駐車場スペースになっている。
生体反応はモール中にいくつか点在していたが、とりわけ強い反応を示しているのは最下層であった。
あの青光点でうごめいている場所だ。
「ハロー、ハロー。だれかいませんか」
ラリーが一階の中心にある食料品売り場で拡声器を使って呼びかけてみたが、予想通り自分の声のみが周囲に虚しく反響するのみで住民の発見には至らかった。
チームは一階ロビーに戻り、東側にある止まったままのエスカレーターから地下駐車場を目指す。
地下駐車場のブレイカーはすべて落ちており、まだ昼間だというのになかは真っ暗であった。
隊員たちにヘルメットの左右についているライトは暗闇に入ると自動点灯する。
ヘッドライトの灯すほのかな明かりを頼りにバビルスはモニター画面から、現在地置を確認する。
配電盤は駐車場の南側の角にあることが分かった。
「だれかいませんか」
ラリーが暗闇にむかって声をかけた。
「ハロー、ハロー」
続いてジルが呼びかけてみた。
やはり返事はない。
だが、この暗闇の地下の中に何かしらの存在を感じる。
〖隊員たちを襲う悲劇〗
ザワ、ザワ。
ガサ、ガサ。
ゾロ、ゾロ。
なにかはわからないが、硬いコンクリート面を這いずるような不気味な音が聞こえてくる。
ラリーがライトの感度を上げ、物音のする方向を照らしてみる。
と、……。
その何かはまるで波が引くように光源から遠ざかっていこうとする。
ラリーが右の拳を強く握りしめ、直角に曲げた。これは警戒態勢の合図であった。
隊員たちはゼロテクターⅥを構えながら慎重に前進していく。ゼロテクターⅥはこの時代の軍隊が多く使用する銃のひとつである。
「油断するなよ」
ラリーは隊を二手に分け、現在位置から西へ向かってローラ作戦を決行、この物音の正体を突き止めようとした。
隊員たちに言い知れぬ緊張が走る。
防弾ヘルメットに取り付けられた左右のライトが足元の暗がりを頼りなさそうに照らしている。
ザワ、ザワ。
ガサ、ガサ。
ゾロ、ゾロ。
何かはわからないが、暗闇の洞窟と化した駐車場は言い知れぬ邪念で満ちていた。
すでにローラ作戦も道半場まできた。
ここで思わぬ悲劇が起こった。
〖暗闇に蠢くものたち〗
ググ、ガガ、ギィー。
奇妙な叫び声とともに、暗闇のなかから何かが勢いよく飛び出してきた。
「ぎぃやああああああ!」
散開して捜索に当たっていた隊員たちから叫び声が聞こえてくる。
と同時に銃声が轟く。
どれも聞き覚えのある者の声だった。
「プリンタ、ネータ、ゴメル、スパリスタ、フェニックス」
ラリーが部下の名を叫んでみたものの、彼らからの返事はない。
代りに四方八方に撃ちこまれるゼロテクターⅥの発砲音がコンクリート壁面にむなしく乾いた音を響かせている。
「ジル、ライトウ、ゲスター、撤退だ」
ラリーがこの段階で生存が確認できた部下たちに撤退を命じる。
と、その刹那―。
カシャ、カッシャ、カシャ。
地下駐車場の室内灯が一斉に光を解き放っていく。
目が慣れることで徐々に状況がはっきりと見えてくる。
おぼろげながら目の前に多数の何かの気配が感じられる。
「住民のみな、……」
ラリーが声を上げた瞬間だった。
彼はあまりの光景に絶句した。
地下に蠢くもの……。それは百はくだらないであろう。
ジル、ライトウ、ゲスターもあまりの凄惨な光景に目を背けた。
そこにはなんと腐りただれた人の顔に半身がアザラシのような奇怪の姿をした怪物が多数蠢いており、住民と思しき人々の身体を引き裂き、バラバラにして血肉をむさぼっていた。
その中にネータ、ゴメル、スパリスタの姿もあった。
〖第三幕〗
ラリーらは退路を確保すべく、ゼロテクターⅥで応戦するも、撃っても撃っても化け物を殺すことかなわない。
生き残ったのはラリー、彼の妹ジル、通信士のバビルスは化け物で覆いつくされた地下駐車場から命がけの脱出をはかるのだが、地上では新たな脅威が迫っていた。
〖死なない化け物〗
「この化け物め。離れろ、仲間から離れろ」
ジルは銃口を怪物に向けると、ゼロテクターⅥを乱射した。
これにライトウ、ゲスターもこれに加わる。
ダダダダダダ。
ドドドドド。
無数の銃弾が胸部や腹部に命中するが、怪物は倒れても、倒れても、起き上がり、隊員の死体を貪り食っていた。
ところが、ジルたちに興味をしめした数匹の怪物が群れの中から飛び出し、ライトウとゲスターに襲い掛かった。
まさに一瞬の出来事だった。
ふたりは怪物に襲われると、成すすべもなく群れの中に引きずり込まれていった。
ふたりは左右の頸動脈を瞬時に食いちぎられ、断末魔の叫び声も上げることなく絶命していった。
「この化け物が、死にやがれ」
「ジルよせ。撤退だ。撤退するぞ」
ラリーがゼロテクターⅥを乱射する妹の右手を強引にひっぱるが、彼女はそれを払いのける。
「いやだ。皆を置いてはいけない。仇はあたしが取るんだ」
発砲し続けるジルの精神は今にも音を立てて崩れそうであった。
この地獄と化した場所に任務を終えたバビルスがひょっこり戻ってきた。
彼はその光景を目の当たりにしておもわず嘔吐した。
このわずかな時間に怪物が仲間を襲い、そのの死体を貪り食っていたのだから……。
「ジル、すまん」
ラリーは精神のバランスを崩した妹の後頭部を銃の台座で殴りつけ気絶させた。
〖死の巣窟からの脱出〗
「何をしているバビルス、銃を構えろ、撤退するぞ」
発砲しながら撤退するラリーとバビルスだったが、怪物に致命傷を与えることはできなかった。
それどころか、銃声によって興奮した怪物が三人に向かって押し寄せてくる。
ザワ、ザワ。
ガサ、ガサ。
ゾロ、ゾロ。
このままでは逃げ切れぬと思ったラリーが一計を思いつく。
「バビルス。いいか、銃弾が尽きるまで、天井の梁を撃て!」
二人は恐怖の感情を押し殺しながら、天井の梁をめがて一斉掃射を開始する。
怪物を直接殺すごとができないのなら、取るべき方法はこれしかないとラリーは瞬時に悟ったのだ。
それはまさに怪物が群れをなして襲い掛かってくる瞬間でもあった。
ボキ、バリ、バリ。
天井の梁に亀裂が生じると、轟音を立てながら中央から崩れ落ち、怪物たちをつぎつぎと押しつぶしていく。
これにはさすがの怪物たちも身動きが取れなかった。
気絶したジルを右肩に抱え、ラリーとバビルスはこの生き地獄から脱出を試みた。
バビルスはすでにおびえ切っていた。
三人は怪物を避けながら、北側の業務用通路を回り、そこから階段を伝い、階上を目指す。
だが命がけでたどり着いた一階ロビーで待っていたのはさらなる絶望であった。
〖謎の女出現〗
どこから現れてきたのか、今度は、顔は地下の怪物のようであったが、下半身が四足歩行の獣のような怪物数匹が肉迫してきた。
「もはや、これまでか」
ラリーはセラミックタイルの上に愛妹を静かに横たえると、銃口を怪物に向け対峙する、
四足歩行の怪物たちは三人を遠巻きにしてすぐには襲ってこない。
だが、じりじりと彼らの退路を断つように広がりながらその包囲の輪を縮めている。
グググ、ガー。
四足方向の怪物が雄たけびを上げた。
「きやがれ、化け物ども」
ラリーが死を覚悟したときだった。
ヒュー、ヒュ。
どことからなく、口笛が聞こえてくる。
見ると、階上からエスカレーターのスロープを利用し、滑り降りてくるひとりの女が目に飛び込んできた。
四足歩行の怪物は現れたこの女を新たな標的に定めた瞬間、すべてが終わった。
彼女は二丁拳銃で迫りくる四足歩行の怪物をあっさり仕留めていた。
「何者なんだ、あの女は……」
ラリーとバビルスが目の前で起こっている出来事が信じられないでいる。
怪物はすでにこと切れており、口からは赤黒い血液と一緒にどろどろとした汚物をまき散らし、醜悪な躯を横たえていた。
女は怪物の死を見届けると、今度はラリーたちに向かって銃口を突きつけ、こう叫んだ。
「さあ、あなたたち。血を見せてちょうだい」
本章執筆㊙話
水城のわーるどには二種類の創作パターンがあります
① ひとつは長年描きたいと思っていた企画をそのまま小説にする。
② もう一つは、ユーチューブでみた作品からインスパイアを受けたものを小説にする。
当初は圧倒的に①のパターンが多かったのですが、小説に起こすにつれストックが切れてしまい、最近では、
②のパターンもかなり増えてきたような気がいたします。
本作品はパターン②に属するもので、当時ユーチューブで映画『ゾンビ』の吹き替え版やウォーキング・デッドを
よく見ていたせいか、『自作はサバイバルホラーがいいな』という乗りで書いた次第です。
ゾンビものは元から好きなジャンルだったのですが、世界では様々なゾンビ映画がつくられており、もし自分が
創作するのであればどういったゾンビを描いたらいいんだろうと試行錯誤してみました。
ゾンビの種類は、5種類で上位に近づけば近づくほど生存者と見分けがつかないといった『見た目ではわからない』恐怖というのを根幹に起きつつ、世界観もそれに損なわないよう丁寧に描いています。
タイトルからみる次章の展開
さて、ザ・インパクトー死者が行くのはー『プロローグ』はいかがだったでしょうか。
植民惑星ザドヴィルに降りたったテラ共和国連邦のラリー空挺部隊。
彼らは生存を捜しに、中心街にあるモールで見たものは、想像を絶する光景であった。
次回のタイトル、『死者が行くのは』これは本巻の副題であり、物語の根幹にあたます。
時系列は、ラリー隊が到着するちょうど一年前に遡ります。
そしてザドヴィルでいったいなにがおこったのか。
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