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『プロローグ』の
おもな登場人物の紹介(イメージ)
〖メインキャスト〗
たぬき
この物語の主人公。
低い山に住んでおり、キツネをライバル視している。
ふくよかな体形に青いベストにグレーの短パン吐いている。
頭の上には大きな葉っぱを乗せていて、ベスト中からいつも
大っきなでべそが顔を覗かせている。
性格はマイペースのご都合主義で臨機応変を得意とする。
きつね
この物語の主人公。
高い山に住み、タヌキをライバル視している。
やせ細った体形に赤いベストと茶色の蝶ネクタイ、黒い短パン
を履いている。
性格は狡猾ではあるが、几帳面で現実的な思考を得意とする。
『プロローグ』の章解
〖第一幕〗
ある日、高い山に住んでいるキツネが、低い山に住んでいるタヌキをだまそうとやってくる。
キツネは自分の果樹園にある『なし』を思う存分、食べていいと持ちかけるのだが・・・。
〖序 章〗
あるとき、またあるとき、動物たちだけが住んでいる山がありました。
山の名は『なかよし山』という。
この山は階段状の三連の山で、一番下を低い山、その真ん中を高い山、さらにその上を大きい山と呼んでいる。
低い山にはタヌキが、高い山にはキツネが住んでいました。
キツネはやせ細った体形に赤いベストと茶色の蝶ネクタイ、黒い短パンを履いている。性格は狡猾ではあるが、几帳面で現実的な思考を得意とする。
タヌキはふくよかな体形に青いベストにグレーの短パン吐いている。
頭の上には大きな葉っぱを乗せていて、ベスト中からいつも大っきなでべそが顔を覗かせている。性格はマイペースのご都合主義で臨機応変を得意とする。
お互い田舎の山で暮らしているため、特にすることもなく唯一の楽しみと言えば、何かとかこつけて相手をへこますことであった。
〖タヌキをだましに低い山に〗
キツネとタヌキは、悩ましいネタを見つけては双方の山にからかいに出かけていた。
この日も低い山に住むタヌキのところによからぬ考えを携え、キツネがやってきた。
訪ねていったのは、朝の九時ごろである。
「よう、タヌキくん。起きているかい」
キツネが戸口で声をかける。
タヌキからの返事はない。
「タヌキくんってばさあ」
今度は少し大きな声で呼んでみた。
相変わらず、タヌキからの返事はない。
「このくそ、タヌキ。さっさと起きないかボケが……」
キツネは頭にきて、大声で怒鳴った。
声をかけること七回目にして、寝ぼけ眼のタヌキがようやく戸口に出てきた。
「なんだ、キツネくんじゃないか。朝早くからいったい何のようだい」
この始末である。
キツネは腹立たしく思っていたが、その怒りを鎮め、極力平常心で答える。
「実は、ぼくの住む高い山にはおいしい『なしの木』がいっぱい生えていてね。今日はキミにそれをごちそうしようと思って誘いに来たんだよ」
「梨だって、それはぼくの大好物だよ。すぐに支度するからちょっと待ってておくれでないかい」
梨と聞いて喜んだタヌキは、今までのスローリーな動きが嘘のように疾風のごとく身支度を整え始めた。
キツネは心の中でぼそりとつぶやいた。
〝バカなタヌキだ。引っ掛かったな〟
〖キツネの住む高い山へ〗
二匹はそろって、キツネの住む高い山へと出かけていった。
高い山は果実が豊富に取れた。
四季折々の果実が咲き乱れ、一年中果物に事欠くことはない。
季節はまさに秋である。
一年の中で果実が一番豊富に実を結ぶ季節でもある。
ハァ、フウ、ハァ、フウ。
「梨の木はまだかい」
タヌキはえっちらほっちらと、重い身体に加えてさらに重い背負子を担いで息絶え絶えであった。
「もうすぐだよ」
キツネは心の中で笑い転げた。
高い山の通称果樹園は山の中腹に林立されていた。
「さあ、着いたよ」
キツネに促され、果樹園に着いたタヌキの感想はこうだった。
「なんとまあ、ここは夢の世界かい」
見渡す限り、果樹園は秋の果実で埋め尽くされていた。
タヌキが色とりどりの果実の品定めをしているのを見たキツネがこう忠告した。
「タヌキくん、キミが食べていいのはこの果樹園の中の『なしの木』だけだからね」
キツネが何度も何度も念を押した。
タヌキは何の疑いもなく、梨の木を探し始めた。
「ところで、キツネくん。梨の木はどこにあるんだい」
「ああ、そうそう『なしの木』は果樹園の東のはずれに行けばあるはずだよ」
キツネはにやにや笑みを浮かべると、他の果樹園のほうへさっさと行ってしまった。
〖第二幕〗
梨の実を思う存分食べられると聞いて、天にも昇る勢いのタヌキ。
ところが、キツネの果樹園をいくら探しても『なしの木』は見つからなかった。
文句を言うタヌキにキツネはぬけぬけと言い放つのであった。
〖梨の木は何処に〗
タヌキは梨の実の銘柄を指折り数え、短い団子鼻をひくひくさせながら東の方に歩みを進める。
その目はにやけ、口から大量のよだれを垂らしていた
「おや変だな、大分東の方にやってきたのに甘い梨の香りが全然してこないぞ」
見れば、果樹園というより、どうやらその外れに来てしまったらしい。
あるのは枯れた樹木や腐りかけた灌木がこれまた一つの畑のように東の一区画を占めていた。
タヌキはそれでも根気よく梨の木を探して回った。
ハァ、フウ。ハァ、フウ。
「もうここから先は崖じゃないか、梨の木一本、梨の実一つないじゃないか」
歩き疲れたタヌキの心は怒りの感情に包まれていった。
「キツネめ、おれをだましたな」
烈火のごとく怒り狂ったタヌキは、キツネのもとにすっ飛んでいった。
〖なしの木のとは〗
その頃、キツネは果樹園の只中で秋の味覚を存分に味わっていた。
クリ、アケビ、リンゴなどキツネは、口に入りきれないほどの果実を頬張っていた。
そこへ頭から湯気をモウモウと立てながらタヌキがやってきた。
〝タヌキのヤツめ、やっと気づいたな〟
キツネはそ知らぬふりして果実を口の中に詰め込む。
「キツネくんひどいじゃないか、東の果てまで探したのに梨の木一本も生えていない。これはいったいどういうことだい」
タヌキの剣幕はものすごいものだった。
「なに言ってるんだい、タヌキくん。キミはよく探してみたのかい」
「さがしてみたとも、あったのは枯れ果てた灌木ぐらいだったよ」
「じゃあ、見つけたんじゃないか、おめでとう」
「からかうきかい、キツネくん」
双方の会話は完全にかみ合ってはいなかった。
タヌキの怒る様子を見ながら、キツネはいたって冷静に答えた。
「枯れていた木には何か実がなっていたかい」
「枯れた木なんかに実なんてあるわけないだろう」
キツネは何も言わず、にこりと微笑んだ。
〝しまった。はかられた。実のない木だから『なしの木』か〟
タヌキは遅まきながらすべての真相をこのとき悟ったのだ。
〖悔しさと空腹〗
山を下りながらタヌキの感情はめまぐるしく変化していった。
最初はキツネへの怒りの感情、次は騙されたことへの悔しい感情、最後にはお腹をすかせた悲しい感情と……。
「もう腹が減って動けない」
タヌキは高い山と低い山のちょうど中間にある原っぱで休むことにした。
空には雲一つない快晴だったが、心の中はどんよりした雲が立ち込め、今にも雨が降り出しそうだった。
しばらくすると、タヌキの目から大粒の涙が零れ落ちた。
これは騙された悔しさからではなく、疲れ果て空腹による食べ物の欲しさによるものだった。
タヌキはそのまま寝入ってしまった。
〖第三幕〗
キツネにまんまと騙されたタヌキは地団駄踏んで悔しがる。
そして悔しさと空腹から、山の原っぱでひと眠りすると、「あら不思議」、高い山の方からおむすびが転がり落ちてくる。天の恵みと腹いっぱいになるタヌキ。そこへキツネが血相をかいて降りてくる。タヌキは仕返しとばかりにある一計を思いつく。
〖おむすびころりん〗
ひばりが元気に高く囀る。
「ひばりくんや今何時だい」
果樹園のアケビの木の上で休んでいたキツネが訪ねる。
「やあ、キツネくんか。今ちょうどお昼だよ」
「ありがとう」
キツネは木から滑り降りると、根元に置いてあった青いリックを開く。
なかからおもむろに弁当を取り出した。
そして紐をほどき開くと、そこには大きな、大きなおむすびが五個入っていた。
「腹減ったぞ、見晴らしのいい、栗の木の上で食べるとするか」
キツネがおむすびをもって木の上に登りかけたときだった。
大きい山からものすごい突風が吹き下ろしてくると、その手からおむすびを弾き飛ばしていった。
手から弾き飛ばされたおむすびは山の傾斜をころころ転がり落ちていく。
「待て、おれのおむすび」
といっても転がり落ちたおむすびが時間を巻き戻したように戻ってくるわけがない。
おむすびは急勾配でさらにスピードを増し転がっていく。
キツネは慌てて、転がり落ちるおむすびの後を追っていった。
〖口のなかにおむすびが〗
寝てしまえばこっちのものである。
タヌキの口から止めどなく、よだれが流れ出てくる。
夢の中では見たこともない豪華な食事が並んでいた。
舌鼓をうつほどの山の幸、川の幸がタヌキのまわりをぐるりと取り囲んでいる。
まさにタヌキにとっては至福のひとときであった。
だが、夢である以上いつかは覚めてしまうものだ。
「いい夢だったけど、腹がいっぱいにならないな」
タヌキは横になりながら、胸の辺りで手を組み天に祈った。
「どうか神様、空腹でかわいそうなこのタヌキにお恵みをお与えください」
タヌキは念じると同時に目を閉じ、大口を開いて神からの恵みを待った。
しばらくすると、一陣の突風と共に何やら握り拳大の丸いものがタヌキの大口へと飛び込んできた。
「グッ、なんだこりゃ」
その丸いもの柔らかく何やらおいしそうなにおいがした。
タヌキは思わず、咀嚼してみることにした。
モグ、モグ、モグ。
タヌキの大口から入ったおむすびは腹の中でチーズのようにあまくとろけていった。
タヌキの幸運はさらに続く。
神の恵みをもっと得たいと思ったタヌキは、同じ姿勢でおいしいおむすびがやってくるのを心待ちにした。
信じる者は皆救われる? 再びおむすびがタヌキの大口めがけて飛び込んできた。
〖タヌキの仕返し〗
「今度は鮭結びか」
モグ、モグ、モグ。
「こいつはうまいぞ」
その後もおむすびがタヌキの大口目指して何度も飛び込んできた。
「たらこ味、高菜味、これは何だかわからないが、甘い肉のようなものが入っているぞ」
タヌキの夢は実現し、心も身体も幸せで満たされていった。
「ああっ、お腹いっぱい。ありがとうございました、神様」
西の方角に向かって手を合わせていると、山の斜面を血相かいて降りてくるキツネが見てとれた。
「どうしたんだい、キツネくん。そんなに汗だくになって、かけっこの練習かい」
腹が満たされたことで、タヌキの心の中にも余裕がでてきた。
「そうなんだ、大変なんだよ。ぼくのおむすびが転がり落ちてこなかったかい」
「おむすび?」
〝ははん、さっきのおむすびはキツネのものか。いいこと、いや悪いこと考えたぞ〟
「おむすびねえ。そういえば、さっき北風に乗ってまるい何かが五個ほど転がり落ちてきたけどそれかい」
「そうだ。それそれ。今どこにある?」
キツネが懇願した。
「この『はら』のどこかさ」
タヌキは意味深に答えた。
〖はらのなかとは〗
キツネは『原っぱ』を探し回ったが、おむすび一つ出てこない。
「タヌキくん、『原っば』の中にあるだなんて嘘だろ。からかうのもたいがいにしないか」
余裕をなくしたキツネが怒り心頭で詰め寄っている。
「キツネくん、よく探したのかい、『はら』のなかを……」
タヌキが舌なめずりして、大きなおなかをさすって見せた。
キツネの顔が次第に青ざめていく。
〝そうか、やられた。『原のなか』じゃない。おむすびすべてヤツの『腹の中』にあるのか(つまり食べちゃったのか)〟
今度はキツネがぎゃふんとタヌキによってへこまされてしまった。
みなさんもお互い悪いことはしないよう気を付けましょう。
本章執筆㊙話
〝物語を紡ぐこと、それは情操教育を深めていくことへの第一歩なのか〟
この物語は当時、水城優が小学校一年生の頃、学習指導要領の一環だったと思いますが、先生からお題を受け、クラス全員がバトン方式で物語を書き綴っていくというものでした。
当時国語が苦手であった私は、なんとお話の二番手でした。
つまり起承転結であれば、承の部分を最初に担うことになったのです。
それまで物語を作るといったことなどしたことがない私は、一番手の子の原稿をみて愕然としました。
タイトルは「なかよし山の動物たち」それでお話の冒頭で主人公のキツネとタヌキは仲が良いどころかいつも喧嘩ばかりしているとのくだり……。
「どこが仲良しなんじゃい」と今なら突っ込みどころですが、当時は必死でした。
今は時効ですが、実は二話は私の作ではなく、母の作でした。
このとき自分の不甲斐なさを知ると同時に白紙の状態から物語を紡いでいくことの難しさや面白さを初めて知りました。
この共同作品が今思えば、私が作家を目指すきっかけとなったことは確かのようです。
タイトルからみる次章の展開
さて、なかよし山の動物たち『プロローグ』はいかがだったでしょうか。
キツネがやれば、タヌキがやり返すというとんち合戦がこの物語の肝になっています。
『なしの木』VS『はらっぱ』
今回はどうやらイーブンということに落ち着きそうな感じがします。
次章から、本編開始ということで、なかよし山のはずなのなのに、そりの合わないキツネとタヌキ。
タイトルは『魚釣り』
キーポイントは、釣った魚をどうするかでしょう。
盗む⁉ 邪魔する⁉ 黙ってだべちゃう⁉
いったい、魚釣りを巡ってどんないたずら合戦が始まるのでしょうか。
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